環境化学分野

考古学の視点から見る環境分析

私たち人間は、地球上での自然環境から生物進化や文明の発達を物語る歴史環境に至るまで、空間的にも時間的にも広い範囲の環境に取り巻かれています。環境化学分野では、こうした環境を形作る化学物質の存在状態や性質、環境への影響などを明らかにするために、有機化学、分析化学、生物化学など化学のほとんどすべての分野を基盤に、最先端の機器分析技術や合成手法を用いた基礎から応用までの研究に取り組んでいます。

研究分野・教員紹介

岩井 薫 教授
環境高分子化学

機能性高分子を用いた環境問題・エコ技術への取り組み

岩井 薫 教授

近年、異常気象や酸性雨など様々な環境問題に関心が集まるとともにエコ技術への注目も高まっています。私たちの研究室では、機能性高分子を用いた環境問題への取り組みとして、環境の変化を詳細に追跡可能な環境応答型機能性高分子、また環境に負荷を与えない環境低負荷型機能性高分子に注目した新規機能性高分子の設計・合成を行なっています。具体的には、温度やpHといった外部環境変化に応答してその性質が変わる環境応答型高分子とその変化を伝えることができる蛍光プローブとを組み合わせた新規機能性高分子を設計・合成しています。これまでに、温度応答型高分子を用いることで極微小領域の温度を測定可能な蛍光温度センサーの開発に成功しています。また、天然由来の高分子や生分解性高分子を利用した環境低負荷型機能性高分子の合成も行なっています。

研究者総覧
研究室HP
温度応答型高分子を用いた細胞内部の熱伝達の様子(右図○が熱源)
温度応答型高分子を用いた細胞内部の熱伝達の様子(右図○が熱源)
中沢 隆 教授
プロテオミクス

歴史と環境の化学

中沢 隆 教授

最近の生命科学では, ある一つの生命活動を,関係するタンパク質の系統的な分析によって解明するプロテオミクスの研究が進んでいます。私たちは考古学の資料や文化財に残されたタンパク質をプロテオミクスの先端的な実験技術によって分析して,古代の生物や人類の活動を知ろうとしています。これまで,質量分析法を使って平城京跡から出土した墨のかけらに含まれる牛皮から作ったと見られるコラーゲンを検出したり,卑弥呼(ひみこ)の時代の絹糸の成分からカイコガの分布や養蚕の歴史を推定したりしました。また, このような研究を支える基礎的な化学的分析法や質量分析技術の開発にも取り組んでいます。

研究者総覧
研究室HP
こんな事が学べます!:タンパク質の構造からひもとく、古代の歴史
タンパク質の分析に使うマトリックス支援レーザー脱離イオン化タンデム飛行時間型質量分析装置。
図(左)タンパク質の分析に使うマトリックス支援レーザー脱離イオン化タンデム飛行時間型質量分析装置。
(右)コナラの葉に隠れた野生の天蚕(テンサン)の繭(円内)。
竹内 孝江 准教授
環境質量分析学

文化財保存のための微生物の生態化学と極微量分析

竹内 孝江 准教授

高松塚古墳の壁画などの文化財が微生物により損傷を受ける例が多数報告され問題になっています。微生物による文化財の劣化を少なくするためには,カビ微生物の発生を迅速に検出することが重要です。私たちの研究室では,カビから放出される揮発性有機化合物(MVOC),いわゆるカビ臭物質を可搬型イオン移動度装置でオンサイトモニタリングすることにより,カビの種類や生育段階を推定するトータルシステムの開発研究を行っています。図(右)は,ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて計測したA. fumigatusのMVOC発生量の経時変化です。ベルガモテンなど,セスキテルペン類は胞子形成時にのみ生成していることを発見しました。生育段階に応じて特異的にカビから代謝されるMVOCがあることやMVOCの種類や量はカビ種や生育環境に依存することがわかり,これを利用してカビ種を同定するソフトウェア”MVOC Finder”(図(左))を開発しました。
現在は,文化財環境において揮発性有機化合物を介した微生物間コミュニケーションの研究に取り組んでいます。

研究者総覧
研究室HP
左図は,カビ臭物質の計測データからカビ種を同定するソフトウェア”MVOC Finder”。右図は,ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて計測したA. fumigatusのMVOC発生量の経時変化。
左図は,カビ臭物質の計測データからカビ種を同定するソフトウェア”MVOC Finder”。右図は,ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて計測したA. fumigatusのMVOC発生量の経時変化。
三方 裕司 教授
環境分析化学

有害重金属を検出・定量・除去する化合物の開発

三方 裕司 教授

急激な産業活動の発展あるいは都市生活の過密化などにより,重金属やリン化合物による水環境の汚染が深刻となっています。私たちの研究室では,種々の有害重金属イオンやリン酸種の高選択的蛍光検出・捕捉剤の開発研究を行っています。図では,私たちが開発した化合物である8-TQOEPN (2c)が,カドミウムイオンに応答して選択的に蛍光を発することを明らかにしました。他にも,亜鉛イオン,水銀イオンやリン酸種などの無機イオンに対する選択的蛍光プローブの開発にも成功しています。現在は,有害重金属などを検出するだけでなく,環境から取り除くことができるような分子の創製にも取り組んでいます。

研究者総覧
研究室HP
8-TQOEPN (2c)による溶液中および細胞内カドミウムイオンの選択的可視化
図 8-TQOEPN (2c)による溶液中および細胞内カドミウムイオンの選択的可視化